新潟地方裁判所 昭和54年(行ウ)4号 判決 1981年8月25日
原告 山口清太郎
被告 新潟県知事
代理人 渥美正弘 外川利徳 中村登 ほか五名
主文
本件訴えを却下する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事 実<省略>
理由
行政処分の取消しの訴えは、当該処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り、提起することができるのであり、このような利益を有する者であれば、必ずしも処分の相手方に限らず、それ以外の者でも右訴えの原告となり得ると解するのが相当である。ところで、原告が本件農地転用許可処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有するとして主張するところは、本件農地転用許可処分によつてその対象となつた本件畑地上に建物が築造されることによりこれに隣接する原告所有の畑地の日照・通風等が阻害されるというものである。しかし、これは本件農地転用許可処分が直接原告の法律上の地位にもたらした変動ではなく、直接には本件畑地上に建物が築造されることから生ずる事実上の影響ないし被害に過ぎないことはその性質上明らかである。そして、農地法は農地転用許可の制度によつて農地がほしいままに他用途へ転用され、農地の減少を来たすことを防止し、耕作者の地位の安定と農業生産力の増進を図つている(同法第一条)のであつて、農地転用許可処分の対象となる農地に隣接する農地の所有者が右のような影響ないし被害を受けないことの利益までも保護しようとしているものではない。したがつて、このような影響ないし被害については、隣接農地の所有者は処分の対象となつた農地の所有者もしくはその上に建物を築造しようとする者に対し、建築の差止めあるいは損害賠償を求める民事訴訟を提起することによつて、被害の防止ないし回復を図るべきであつて、原告のいうような事柄は処分の取消しを求めるうえでの法律上の利益とはなり得ない。
したがつて、原告は本件訴えにつき原告適格を有せず、本件訴えは不適法であるからこれを却下することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 柿沼久 大塚一郎 竹内純一)